公正証書の作り方

公正証書とは

夫婦の協議にて取り決めた条件を必ず守ってもらうためには強制執行認諾約款付き公正証書を作成する事が大切です。

慰謝料や財産分与、養育費などが約束通りに支払ってもらえなかった場合に、裁判を起こす事なく相手の給料や財産を差し押さえるなどの強制執行ができます。

特に相手がお金や時間にルーズな性格なら公正証書の作成まで離婚計画の一つに組み込んでおく事をオススメします。

公正証書自体に
強制力はない

公正証書だけでは強制執行ができず、公正証書に強制執行認諾約款が付いている事で初めて強制執行ができるようになります。そのために公正証書の最後に「強制執行を認諾する」という旨の条項を明記します。この条項が記載されていない公正証書には強制執行力はありません。

公正証書の作成

公正証書は公証人役場で作成します。公証人役場は全国に約300か所あるので近くの場所を事前に調べておきましょう。場所は全国公証役場所在地一覧で調べる事ができます。

原則的には当事者二人が出向きますが、代理人に出向いてもらうことも可能です。

事前に離婚協議書を作成して持っていくのが理想ですが、協議内容をメモや口頭で説明しても問題ありません。離婚の状況や条件に漏れが無いように注意してください。その内容をもとに公証人が公正証書を作成します。

夫婦で出向く場合に必要なもの

  • 身分証明書(免許証やパスポートなど顔写真の入ったもの)
  • 各自の印鑑証明書と実印
  • 離婚協議書(必須ではないがあればスムーズに進む)

代理人を立てる場合に必要なもの

  • 公正証書の内容となる条項を記述した委任状
    ※「執行認諾条項付き公正証書を作成する権限を委任する」と記述する
  • 夫婦の印鑑証明書
  • 代理人の印鑑証明書
  • 代理人の実印(夫婦の実印は不要)
  • 代理人の身分証明書(免許証やパスポートなど顔写真の入ったもの)

公正証書の作成費用

公正証書の作成には手数料が発生します。金額は目的価格(財産分与、慰謝料、養育費などの金額)によって異なります。

目的価格が100万円以内なら作成費用は5000円、200万円だったら7000円となります。この金額は法律によって定められているためどこの公証人役場でも同じ金額です。

目的価格によっては1万円を超える出費となりますが、公正証書が無ければ離婚相手に金銭債務の不履行があったとしても、裁判を起こして判決を待たなければ強制執行を行うことができません。裁判にかかる時間と費用を考えれば大きなメリットになりますので、作成しておいたほうが安心です。一種の保険のようなものですね。

目的価格
手数料
~100万円
5000円
~200万円
7000円
~500万円
1万1000円
~1000万円
1万7000円
~3000万円
2万3000円
~5000万円
2万9000円
~1億円
4万3000円
~3億円
4万3000円(5000万円ごとに1万3000円加算)
~10億円
9万5000円(5000万円ごとに1万1000円加算)
10億円~
24万9000円(5000万円ごとに8000円加算)

参考:日本公証人連合会

公正証書作成依頼文書のサンプル

離婚に際しての取り決め条項

Point1

田中太郎(以下「甲」という)と田中花子(以下「乙」という)は離婚することに合意し、その届出にあたって次の通りに取り決めを結びました。

第1条 甲と乙の長男(平成○○年○○月○○日生、以下「丙」という)及び長女(平成○○年○○月○○日生、以下「丁」という)の親権者を乙と定め、乙は養育看護を担当する。

第2条 甲は乙に対し、丙及び丁の養育費として一人○○万円、計○○万円を平成○○年○○月から成年に達するまで毎月末日までに「○○銀行○○支店の乙名義の口座○○○○○○」に振り込む。

第3条 丙及び丁が進学、入院など特別出費を要したときに、甲は乙と協議し、必要な費用を乙に支払う。

第4条 甲は乙に対し、財産分与として所有する不動産を譲渡し、平成○○年○○月までに所有権移転登録手続きをする。移転費用及び登録免許税は乙が負担する。

第5条 甲は乙に対し、丙及び丁との面接交渉を認め、面接の回数、日時場所及び方法について、丙及び丁の精神状態に配慮しながら両者誠実に協議し決定する。

第6条 甲は、本契約上の債務を履行しなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を記載した、強制執行認諾約款付公正証書の作成に合意した。Point2

第7条 甲と乙は、以後相手方に対して、本契約書記載以外の金銭的要求、その他相手方の迷惑となるような行為を一切しないことに合意した。

平成○○年○○月
甲 東京都□□区□□丁目□□番Point3
  田中太郎 印
乙 東京都□□区□□丁目□□番
  田中花子 印

Point1 文書の作成

  • 協議内容が具体的に分かるように書く
  • この文書をもとに公証人が公正証書を作成する
  • 公証人に口頭で説明するならメモ程度でかまわない
  • 後から口座の変更は可能

Point2 強制執行について

  • 「強制執行認諾約款付公正証書の作成に合意した」という一条項を記述することで債務不履行時に強制執行ができる

Point3 正本の保管

  • 公正証書は原本と謄本を一通ずつ作成する
  • 正本は慰謝料や財産分与、養育費を受け取る側が保管する
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