悪意の遺棄 – 民法が定める離婚原因

夫婦の義務を遺棄する行為

夫婦には同居義務、協力義務、扶助義務が定められています。それらの義務を正当な理由もなく果たさないことを悪意の遺棄と言います。婚姻生活が続けられなくなるのを承知で義務に反する行動や態度を取ったり、生活が困難なのを放置したりすると義務違反と判断されます。

例えば以下のようなケースが悪意の遺棄に該当します。

  • 生活費を渡さない
  • 相手の帰宅を妨害する
  • 理由もなく同居を拒否する
  • 暴力や虐待で家から追い出す
  • 仕事、あるいは家事を放棄

しかし、状況によっても変わってくるのでこれらが必ずしも悪意の遺棄になるとは限りません。常識の範囲内で倫理的な非難を受けて当然といえる行為が悪意の遺棄となります。

正当な理由があるなら問題なし

正当な理由がないのに夫婦の義務を守らなければ悪意の遺棄となりますが、反対に正当な理由があるのなら悪意の遺棄とはみなされないケースもあります。正当な理由とは次のようなものが挙げられます。

単身赴任
両親の介護や子供の生活などを考えて、やむを得ず単身赴任した場合
入院
病気治療で長期の入院をした場合
夫婦関係修復のための別居
夫婦関係の修復など、夫婦関係を維持するための前向きな姿勢での別居
身の危険を感じての別居
暴力やDVから身を守るために家を出たり、実家に帰った場合
健康上の問題により働けない
怪我や病気などで仕事をするのが困難な場合、故意にではなくどうしても生活費が払えない場合
健康上の問題により家事ができない
正当な理由により、故意に家事を放棄しているわけではないと判断できる場合

悪意の遺棄が認められる事は少ない

故意に義務を果たさなければ悪意の遺棄となり、正当な理由により義務を果たせなければ悪意の遺棄には該当しない事を説明しました。

しかし法律上は悪意の遺棄にあたるものの、実際の裁判では悪意の遺棄が認められる事は少ないという実情があります。生活費を渡さない、家に帰ってこないなどのケースは悪意の遺棄として認定されるのではなく、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と判断される事が多いためです。

どちらにしろ離婚判決が下されることに変わりはありませんが、悪意の遺棄が離婚原因になる事は少ないと頭に入れておきましょう。

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